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「でも、ミキさんみたいな綺麗な女の人にご飯作ってもらえるなんて、うらやましいです」
「え?」
ミキさんの手がピタッと止まる。
私、何か変なことを言っただろうか…。
「ああ、そっか~」
「え?な……何がですか?」
「ごめんね、ちゃんと説明してなくてぇ~、えー、どうしよっかな」
ミキさんは歯切れ悪く、もじもじと体を揺らす。頭の中にハテナマークを浮かべていると、足音が聞こえてきた。振り返ると、あくびをしている運転手さん……仙道さんが台所に足を踏み入れていた。
「あ、仙道ちゃんおはよー」
「あー……、何お嬢、変な顔して」
「おはようございます……あの、ミキさんがなんか……」
「ああ、また新人騙して遊んでんのか、テメーは」
「みんなが気づかない方が悪いと思いまーす」
仙道さんは冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターを取り出しコップに注いでいく。私だけが取り残されているのだ。
「あの、だから何が……」
そんな風に伏せられたら、気になって仕方がない。もう一度、今度は二人に聞くと、予想外の答えが返ってきた。
「コイツ、男」
「は……?」
「だから、ち●こついてんの。見る? 見るならパンツ下ろしてやるよ」
「え?……は、はぁ!!?」
「もう、若い女の子には見せたくないわよ!……ごめんねぇ、女の子だから気づいてると思って」
「で、で、でも……」
ミキさんのお胸には私よりも立派なモノが付いている……私がぶるぶると動揺していると、ミキさんは大声で笑った。
「シリコン入れて、女性ホルモンもらってるの。下半身はいずれ改造予定」
「は、はあ……」
「……こんなのでも、受け入れてくれたんだから若様はご立派よねぇ」
ミキさんは、コンロにかけている鍋に向き直る。私も卵を割ろうとするが……動揺しすぎて、手の力がうまく入らないことが続いた。
「で、お嬢は朝っぱらから何してんすか?」
「お、お手伝いですけど……ん?」
仙道さんの言葉が耳に引っかかった。
「お嬢って、私のことですか?」
「はい」
「……なんで?」
「そりゃ……こんなヤ●ザもんの中の紅一点だから、いいじゃん、お嬢。王子様より呼びやすいし」
「いいな、私もそう呼ぶ!」
なんだか、どんどんヤ●ザに染められている気がしてならない。
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