1 借金のカタって、私ですか?!

1/5
前へ
/96ページ
次へ

1 借金のカタって、私ですか?!

 緑色の瞳に、私の驚いた表情が映り込んだ。目の前の『その人』は、私に手を伸ばし多と思ったら、そのまま背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめてきた。 「間に合って良かった……俺の『プリンス』」  なぜ、私がこんなことになっているのか。  話せば、ずいぶん長い話になる。  ひょいっと投げたボールは、バスケットゴールに吸い込まれていく。地面に付いてバウンドをしたとき、私は大きく腕を上げた。 「やったー!私の勝ち!」  後ろを振り返ると、クラスメイトの男子が汗を流しながら大きく息をしていた。 「宮原、強すぎ」 「そりゃもちろん、明日のお昼がかかってるからね!焼きそばパン、よろしくね」 「わかったよ……」  明日のお昼ご飯を賭けて、1on1の勝負を持ちかけられたが、私を相手にしたことがそもそもの間違い。お金が絡むとめっぽう強くなるのが、『貧乏人のサガ』だからだ。  私の名前は、宮原姫乃(ミヤハラ ヒメノ)。どこにでもいる、普通の女子高生だと自負している。少しばかり他の女の子より背が高くて、ちょっと男顔なもんだから男子より女子にモテる、女子高生。 中学生の時に文化祭でやった演劇で『王子様』の役をやって以来、あだ名は『王子』になっている。幼馴染の明日香から言わせてみれば、『はまり役』だったらしい。  ちょっと変わったところと言えば、ボンクラアホクサクソ親父こと実の父親の借金癖がひどく、家がびっくりするほど貧乏なことだ。  でもその生活も、父親の話によると、あと数日もしたら『終わり』らしい。 「姫、ご機嫌だね」 「だってだって、借金の返すアテがついたってお父さんが」 「本当に!良かったじゃん、もう安心したー」  明日香はベンチに座って、今までの試合を見ていた。はい、と私に水道水が入った水を渡す。私は「ありがとう」と受け取り、隣に座った。 「1円を崇めたたえる生活ともこれでおさらばよ……」 「でも?どうする?」 「ん?」 明日香はニヤッと笑う。 「姫乃が、『借金を返すアテ』だったら」 「ん?どういう事?」 「もう、察しが悪いんだから。だから、姫乃が売り飛ばされちゃったら、どうするー?」 「……まさか、例えクソ親父でもそこまではしないでしょ」 「そうだよね、姫乃のお父さん、そこまでの度胸ないし」
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

615人が本棚に入れています
本棚に追加