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自称・どこにでもいる普通の女子高生から、ラッキーなのかアンラッキーなのか第三者による評価を求める女子高生になってしまった。
学校から帰宅すると家には借金取りのハゲとガリの二人組。その間に縮こまるアホボンクラクソッタレ親父がいた。どうやら、私が帰宅するまでの間、このアホ親父が積みに積み重ねた借金を、この私をカタにして返済しようとしていて…ついに、実の父親にまで捨てられていたのだ。
このハゲとガリが無理やり私を手籠め(思い出したくもない)しようとしていた時に、後光を纏ったこの人…エメラルドの瞳を持つ世間一般でいうところのイケメン、が現れた。そして、今まで見たことのないくらいの現金と引き換えに、私を『買った』のだった。
この人は、苦しいくらいに私を抱きしめていた。親にもこんな力強い抱擁はされたことがない。何度も深く呼吸すると、うっすらとコロンの香りが鼻腔に届いた。春の花の匂いみたいだ。
「本当に無事で良かった」
腕の力はどんどん強くなっていく。お腹を叩くと、ふっと力が緩む。
「よくないですよ!お金!あんなにいっぱい持っていかれて……!」
「気にしないでください」
「はあ?!」
あんな大金、目の前で持っていかれて……気にしないわけがない。
しかし、彼はとんでもないことを言い放った。
「私が貴女を買っただけですから。……キャッシュで」
「……はい?」
「現金なんて、久しぶりに使いました。さあ、参りましょうか、私のプリンス」
「きゃっ!」
背中と膝の裏に腕を回し、軽々と私は抱き上げられた。いわゆる……お姫様抱っこだ。
「ちょ、ちょっと…!どこに行くんですか?!」
「私の屋敷です、もちろん」
「どうして?!」
きょとん、とした表情で私をまじまじと見る。まるで、宇宙人を見るような、なにも理解できないとでも言いたげな目だ。
「どうしてって……?……今貴女の所有権は、私にあります。私は、私の持ち物を手の届く範囲に置いておきたいだけですよ」
「はっ?!」
驚いて顔をあげると、深緑の瞳に私が映る。それに気づいたのか、瞳はエメラルドグリーンに変わりにっこりと微笑んだ。
「早く屋敷に向かいましょう。……着替えも用意してますから」
「着替え……?」
「その姿は、あまりにもセクシーすぎますよ」
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