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僕の日常2
僕はこれまでに恋という恋をしてこなかった。
中学に入り「思春期」を迎えた男女にとって、恋愛は重要なものだったけど、僕はそれら全てを少し離れた場所から冷めた目で見ていた。
中学生の時「クラスで誰が1番可愛いと思う?〇〇。」
と友達の間宮雄太郎が僕に問いかけることは何度かあった。
そんな時僕は決まって
「僕は中原さんがいいと思うな。」と言った。
中原さんとは、当時図書委員で一緒だった、
中原美優の事だ。彼女は、恋愛に全くと言っていいほど興味の無かった当時の僕から見ても、
男子から人気があった。顔はよくできた人形のように整っていたし、性格も明るく、朗らかで人当たりがよかった。だから、まだ決まっていなかった図書委員の僕のペアに彼女が立候補した時、僕は少し男子から冷たい目を向けられた。
僕の中学時代の女子との会話の半分以上は、中原とだったと思う。僕は元々女子と仲良くできるような性格ではなかったし、気の利いた会話もできなかったから、女子からは空気の様な存在だったと思う。僕も納得している。
だが、中原は委員会が一緒というのがあったのか、根暗な僕に割と話しかけてくれた。
「〇〇くん。今日通学路に綺麗なコスモスが咲いていてね。〇〇くんにも見せてあげたかったよ!。」
図書委員の仕事で残って作業をしている時、彼女はよく花の話をしてくれた。
彼女の声はとても綺麗で、眠くなってしまう。
「それはよかったね。」
「あんまり興味ないな~?」
「そんなことはないよ。君の話はいつもおもしろい。」
「それならいいんだけど…。ねぇ?〇〇くん?。」
彼女の声のトーンが変わったので不思議に思った。僕は机から彼女の方へと視線を移した。
夕日に照らされた彼女は、触れただけで壊れてしまいそうなくらい危うく見えた。
「サッカー部の宮本くんに昨日告白されたんだ。〇〇くんは、どう思う?参考までに聞かせてよ」と中原は微笑みながら言った。
僕はその時なんと答えたんだろうか…。
気がついたら電車が来ていた。僕は電車に乗り込み、空いている席に座った。他にも2、3席空席がある。電車の中の7割は同じ高校の制服を着ていた。中原の問いに、中学3年生の僕はなんと答えたんだろうか。高校2年生になった僕はもうすっかりその答えを忘れていた。
高校に入って、彼女に出会って、僕は生まれ変わったのかもしれなかった。。
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