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彼は少し躊躇ったが、話してくれた。彼が私について調べた事すべて。私の父はウィンカーの地を治める公爵、ウィリアム・ハワードだった。ハワード家に出入りしていた花屋のエリーと恋に落ちるも身分の違いから公認されず、結ばれなかった。それでも生まれてきた私と母への想いは変わらず、愛し続けて独り身でこの世を去ったらしい。
「当時当主だったお前の父親が、娘の成長を一目見たいと思ってこっそりお前達2人をあの舞踏会へ招待したらしい」
「そんなことが……」
衝撃の事実だった。私がウィンカー公爵の娘だったこともそうだが、何よりやっと父親のことを知ることができた。両親は許されない恋だったかもしれない。それでも互いを憎むことなく、忘れることもなく純粋に愛し続けた。このカメオがその証だ。
私も、そんな風になりたい。
きっとこの先、私達に立ちはだかる壁は大きいだろう。それでも、共に乗り越えてくれるのがキース様なら。何年もの時を経て変わらず想い続けてくれた彼ならば、きっと乗り越えられる。そう確信している。
「キース様。このルビーに誓って、愛しています」
「!!」
人生で初めて彼の照れた顔を見た瞬間だった。
fin.
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