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第一話「リーベ」
ダイヤモンド型と呼ばれる地形を持つカトラリア王国──その昔は、強国だった。今ではわずかに採れる鉱石の輸出で成り立っているだけの、資源の乏しい弱小国家に過ぎない。力を持った周囲の国々がこの小国を独立させたまま見逃しておくのは、カトラリア王国だけに存在する、ある血筋のためだった。
勇者は、この国で生まれる。
しかし、世界を混沌に陥れるという魔王もまた、この国から生まれるのだ。
貧しい国とはいっても、首都の市場は多くの人々でにぎわっている。新鮮な野菜や果物が並び、屋台からは出来立ての食物の匂いが沸き立っている。売る者、買う者、歩くだけの者、誰しもが活気に満ち溢れている。
歴史の古いカトラリアの街並みは美しい。建物も、通りも、様々な色を使用したれんが造りでできている。道路には装飾を施された馬車が行き交い、着飾った貴族たちが乗り降りする姿も多く見られる。
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