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第一話「リーベ」
市場から少し離れると、夜になれば酔っ払いの浮浪者や鉱山で働く労働者たちで繁盛する酒場がある。昼間はただのレストランだが、貴族たちはもちろん、少し金を持っている連中は近寄らない。集まるのは貧しい労働者とその家族たちだ。汚れた服を着た子どもたちが、酒場の一角に集まって何かを懸命に見ている。
小さな丸いテーブルに布を敷いて、傾きかけた古い椅子に座っているのは布で顔を隠した占い師だ。時折、この酒場に現れる。占い稼業が始まるのは夜になってから。客となる親たちの印象を良くするため、子どもたちとボードゲームで遊んでいるのだ。
占い師は言った。
「ここに三つの駒がある。これは王の駒。これは奴隷の駒。そしてこれは悪魔の駒だ」
白黒の盤面の上に、木彫りの駒を三つ置いてみせた。そして子どもたちにこう尋ねた。
「さあ、どれが一番強いと思う?」
子どもたちは口々に答えた。
「悪魔だ!」
「違うよ、王が一番に決まってる!」
その様子を眺め、もったいぶるようにして占い師はただ微笑んだ。年齢も、性別も、その姿と声からは推測することはできない。
続けて、占い師は言った。
「王は言った『私は神だ!』」
「奴隷は言った『私は人間だ!』」
「悪魔は言った『私は悪魔だ!』」
「さあ、正しいことを言っているのは誰だ?」
子どもたちは今度も悩まなかった。
「もちろん王さ。悪魔は嘘つきのはずだもの」
「悪魔が嘘をついているなら、悪魔じゃないってことになるよ」
「あ、そっかぁ…」
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