第一話「リーベ」

2/13
前へ
/655ページ
次へ
 リーベはそう言うと、柔らかく目を細めて笑った。 「レイでいいって言ったろ。おれたちは友達なんだから」  そう返したのは、意志の強そうな瞳をした黒髪のレイだ。  リーベは笑って頷いた。 「あ、レイ! 手首のところ、怪我してる」  手首についたかすり傷を見つけて、リーベが叫ぶ。 「ほんとだ。どこかで擦ったかな」 「ちょっと待ってて」  リーベが傷口に手をかざして短い呪文を唱えると、ほのかな光が発せられ、次の瞬間には元から何もなかったかのように傷は治っていた。 「本当にすごいな、おまえの魔力(マナ)は」  跡形もなく元の状態に戻った肌を見て、レイは感心した。 「ぼくは大人になったら司祭になって、もっともっと回復魔法の勉強をしたいんだ」  少し恥ずかしそうな顔をして、リーベは笑った。 「おれたちが大人になった頃、『竜魔王(ドラゴン・サタン)』が復活して世界を混沌へと陥れる……。おれの祖父も、父も、かつて勇者として魔王を倒してきた。その血を受け継ぐおれも、魔王を倒す旅に出なきゃならない」  レイはリーベのほうに向き直り、改まって言った。 「リーベ、そのときはおれについてきてくれるな?」     
/655ページ

最初のコメントを投稿しよう!

775人が本棚に入れています
本棚に追加