第二話「サリア」

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 民家の陰で様子をうかがっていたレイは、独り言を漏らした。 「屍肉を喰らう者たち(アード・ウルフ)……。こいつら、そうか……義賊か!」  住民の数より多いと言われるだけあって、宿は簡単にとることができた。  太った宿屋の主人は、勇者にたいして不愛想だった。彼はもう気にすることもなく、宿帳に記名した。電気の消した部屋で、寝心地がいいとは言えない木製のベッドに仰向けになり、レイは目を閉じた。  ずいぶん長い間、眠りは訪れなかった。さっき出会ったばかりのアード・ウルフのこと、石になった母のこと、そしてリーベのこと。民たちの、レイを見る疑わしげな視線。ほんの数日前、勇者交代の儀が行われたその日まで、彼は国民の期待を一身に背負った、若き勇者であったはずなのに。  名誉のために勇者としての修行を積んできたわけではない。この国を救うのが、彼の生まれながらの使命だったからだ。  魔王となった友人を救うのは、その使命に反することなのか?  問いかけの答えが出る前に、彼は深い眠りに落ちていた。  真夜中、客室のドアが慌てた様子で叩かれる。静まった宿に響き渡るノックの音は、レイが泊まっている部屋のドアから聞こえるものだった。     
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