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宝城直也は私の想像とは全然違った。
眼鏡の生徒会長。
アニメのイメージが先行し過ぎだ。
ほんと、イケメンだ。
よくこんなイケメンが生徒会長として講堂で喋ってるのに気がつかなかったものだ。
私のイケメンレーダーは壊れてるのか。
そもそも生身の男にレーダーは働いていない。
そうだ、私は自分のクラスの男子の顔さえよく把握してないじゃないか。
そもそも男子と言う生き物が苦手なのだ。
汗臭い別の生き物だ。
女のことをいつもエロい目で見ている気持ち悪い生き物なのだ。
エッチな動画ばかり見て、美女に囲まれて暮らしたいなんて妄想を繰り広げてる連中だ。
ギラギラした目でその若い欲望を満たそうと、女子を見つめてるに違いない。
私は男子とは高校生になって、孔明君と田端君以外、目すら合わせたことがない。
「あなたが闇の住人さんか」
私は一度目を合わせただけで一度も宝城さんの顔を見ていない。
目を合わせたら負けだ。
私は目が泳いでるのを十分に自覚していた。
それを分かってて、宝城は私の視界に顔を覗かせた。
「なんで目を合わせてくれないの?」
ワッ!と私は、驚いた。
「とにかく先輩、ラブレターは渡しましたから。私、帰ります」
「ありがとね」
その夜、ゲームの中で宝城に捕まった。
「ラブレターの中身読んだでしょ」
「はい」
「誰が落としたのか、分からない?」
「分かりません」
「そっか…」
「俺も心当たりがないんだよね」
今私はイケメンと喋ってる。
「あんなに強い気持ちで告白されたら、気になるじゃない」
孔明や田端よりかっこいい先輩と。
「闇の住人さん、探してくれない」
「は、はい?」
そんな難題。
どうやって探すの?
困った時は田端だより。
「探せって雲をつかむような話だよな」
「頼むよ」
「まあ、宝城さんの頼みじゃ断れないしな」
うん?この時私は感じた。
このプレイボーイの田端は男には興味がないのかと。
そうだ、美人が好きなのは確かだが、もしかしたらこの世の美しいものがすべて好きなのかもしれない。
田端はモテ男だけにお洒落だ。
オシャレなのは美意識が高いということではないのか。
それに意外なのが、美術館とかに頻繁に通い詰めていることだ。
チャラ男のくせに絵なんて、どうせ女にもてたいからだろうと思ったが、美しいもの好きなら、当然美術品にも興味があって不思議じゃない。
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