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私は悩んだ。
本人が望んでいないことだからだ。
「身分違いの恋ですよ」
「身分違い?」
宝城は首をひねった。
「確かに俺の家はお金持ちだ。世界中にカジノを持ってるし、別荘だって、両手で足りないし、お父様は政治家や実業界のお友達がいっぱいいるけど」
何の自慢だ。
「家は江戸時代から続く旧家だし」
そんな家のお坊ちゃま、普通のやつはみんな敬遠するよ。
「でもそんな身分の違いなんて今時流行らない。確かに俺はイケメンでロミオみたいだけど、相手がジュリエットでも構わないのに」
「じゃあ私でもいいでしょ」
「ダメダメ、あなたはジュリエットじゃないし、将来太りそうだし」
「セクハラ」
うちは親戚中見渡してもデブは一人もいない。
ポッチャリばかりだ。
もういい、先輩のディスリに耐えられない。
「うーん…」
宝城はラブレターを何度も裏返したりして観察してる。
「焙ったら文字が出ないかな」
「出ません、それやりましたから」
「そう…」
「実はさ、この字、見覚えがあるんだ」
「そうなんですか…」
私は戸惑った。
「でもね…、できれば信じたくないんだ」
もしかしたら宝城は気がついてるのかもしれない。
「魔法が使えるんなら、ラブレターなんか書かなくたって、魔法かけちゃえばいいのに」
気がついてる。
「まあ、しょうがないわね。相手が分からないし」
宝城は私を上目使いに見た。
「でも彼の気持ちは伝わったわ」
今、彼って言ったよな。
「下僕、そう伝えといて」
えっ?下僕って、私のこと?
「それとラブレターを拾ってくれて有難うね」
うん、初めてお礼を言った。
「気持ちには応えられないけど、俺も好きだよって、浜浦に伝えておいてくれ」
そう、魔法少女浜浦は男子なのだ。
女装癖のあるリアル男子。
いや、正確には男の娘なのだ。
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