2/17
前へ
/17ページ
次へ
通学沿線、改札手前で私は一枚の手紙を拾った。 ピンクの封筒。 今時封書か。 誰が落としたんだろう 名前も書いてない。 封はしてない。 私は全く意識せずに中身を取り出した。 キャラクターものの便せん。 これは若いやつの手紙に違いない。 私は文章を読み進めるうち、それがラブレターと言うことに気がついた。 なんだ、これ。 ラブレターかよ。 どうしよう、元の場所に落としとくか? いや、そういうわけにもいかない。 落としたやつはきっと放課後か何かに好きな相手を呼び出して、この手紙を手渡すはずだ。 それまでドキドキしながら、おもむろにポケットに手を入れると、何もない。 「なんだよ、いきなりこんなところに呼び出したりして」 ああ、どこで落としたんだろ。 教室か?いや、校庭? どうしよう、目の前に好きな人がいるのに。 目が合い、ドキドキに拍車がかかる。 とても面と向かって、「好き」なんて言えない。 言えないから、ラブレター書いたんだよ。 どうしよう…。 なんて三文芝居が開演されるはずだ。 なのに、大事な台本を落としてしまった。 きっとラブレターの主は焦ってるだろう。 やばい、早く落とし主を見つけてやんないと。 「宝城直也さま」 男子宛てだ。 「なんだよ、女子か、これ書いたの」 今時ラブレターなんてと思ったけど、女子が頑張って告白してるんだ。 ちょっとだけ応援だな。 宝城直也か…。 なんか聞いたことあるような無いような名前。 ってことは同じ学校かな? 取り敢えずうちの学校で探してみるかな。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加