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私はゲーム上の宝城直也に接触してみることにした。
とは言え、人見知りの私にゲーム上とは言え、話しかけるのは勇気がいることだ。
私は思い切って声をかけてみた。
「こんにちは、宝城さん」
「闇の住人さん?初めまして」
「宝城さん、あなたは生徒会長の宝城さんですか?」
「あれ、同じ高校?何年生?」
「一年です」
「じゃあ、2つ下ね」
「あのう、実は宝城さん宛てのラブレター…」
と書き込んで、私はふと思った。
宝城直也。
もしこれが本人だとして、いや、偽名を語る別人でも同じか。
あのラブレターはもしかしたら、人間の宝城直也宛てだったんだろうか?
ゲームの中の宝城直也宛てだったんじゃないだろうか。
そもそもこのゲームの宝城直也がなりすましかもしれないし。
どっちだ…。
いや、はっきりしない。
考えても分からない。
とにかく報告だ。
「宝城直也宛てのラブレターを拾ったんです」
「えっ。手紙?」
「へえ…」
「ゲーム内チャットで話せばいいのに、手紙なんて」
そうか、やっぱりこの手紙は仮想現実の宝城直也宛てじゃない。
「現実の私宛てなのかしら」
「きっとそうですよ」
「そっか…」
このゲームのユーザーは多い。
1千万ダウンロードと言うから、中高生なんかは一度はやってるかもしれない。
「一つ、聞いていいですか?」
「何?」
「あなたはなりすましですか?」
「さあ、どうかな」
「だとしたら、ラブレターの話は忘れてください」
「そうだね、学校で本人に直接渡した方がいいよ」
「明日、学校に持ってきます」
「私のこと知ってる?」
「わかると思います」
「女の子?」
それには答えなかった。
ネット上でプロフィールがバレるのは危険だからだ。
「闇の住人で声かけさせてもらいますね」
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