第1章  ビッチな彼

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「細野さんは? 大学生なんでしょ。大学の勉強に加えてわざわざ夜間の専門学校で調理師免許取って、卒業したらコックさんになるの?」 「いや、俺は調理師になりたいわけじゃないんだけど。管理栄養士って知ってるか?」  細野は昼間は大学の健康保健科学部栄養学科で管理栄養士となるべく勉強中だった。 「んー、栄養士ってなんとなく聞いたことあるけど、何してる人か知らない。給食作る人だっけ?」 「それもするけど、給食作るっていうよりも、献立を作るほうが多いかな。病院とか学校とか宅配給食を栄養学的な見方で献立作ったり、患者さんに食事のアドバイスしたりする人」  大学の授業では理論的なことは学んでも調理のことはあまり詳しく知る機会はない。調理実習もカリキュラムにはあるが調理師学校とは次元が違う。  将来的に病院や学校の管理栄養士として仕事がしたいと思っている細野は実践的な調理を学びたくて調理師専門学校へ入ったのだった。 「まあ、俺の話はいいだろ。それより相談って?」 「ん? ああ、もう終わったよ」  秋本はにっこり笑って酎ハイを飲み干した。地味な大人しい顔だちだと思っていたが、そうやって笑うと途端に人好きのするやわらかな雰囲気になる。
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