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「起きろ、お前、きょう早番だって言ってただろうが」
翌朝、秋本の肩を揺さぶるとうーんと眠そうな声を上げて、幼い仕草で目をこする。こんなときだけ秋本が年下だと実感する。まだ二十歳、学生でも通用する年だ。
「細野さんは?」
「俺は日勤。ほら起きろ」
調理師学校を卒業後、細野は病院に、秋本はレストランに就職した。
秋本の早番と細野の日勤はちょうど朝の準備が合う。だから秋本は細野が日勤の日に泊りに来ることが多いのだと細野も気がついている。シフトで仕事をしている者同士、その辺の融通はよくわかっていた。
ゆうべ秋本が仕込んでくれたミネストローネ風の具だくさんスープにご飯を入れた洋風おじやをさくっと食べて、二人で部屋を出る。
駅まで歩いて十分ちょっと。
住宅街の細い道を抜けながら、ちらりと秋本のうなじを見る。
二日続けて同じ服で出勤する秋本が職場でどう思われているのか細野は知らない。
あるいは勤務先から一駅先の寮扱いの借上げアパートで着替えてから出勤するのか。いずれにしても厨房だし制服があるから私服はどうでもいいのかもしれない。
自分だって通勤はポロシャツに綿パンツという学生に思われかねない軽装だ。
「じゃあね」
にこっと笑った秋本が分かれ道で手を振るのをなんとなく見送って、駅に向かった。
第1章 完
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