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「え...。」
ノゾムは驚いた顔をして医者を見つめた。
「当時のわしは何もしてやることができなかった...。だからこうして医者になったんだ!弟を救えなかった分、人の命を一つでも多く救いたいと思った。弟の死で...命の本当の重さを知ったんだ...。」
ノゾムはそっと胸ぐらを掴んでいた手を離した。
「確率は少ないが、0ではない。1%も1秒も無駄にはしない。手術を行う以上、医者として精一杯尽くすと約束する。だから、兄として変わらない笑顔でススム君に寄り添っていて欲しい。」
ノゾムは濡れていた顔を腕で拭った。
「分かりました...。お願いします。」
そう言って深くお辞儀をするとノゾムは診察室から出て行った。
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