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ラオムムーブ。目の前の空間を割りイメージした先へ転移する移動技。それを攻撃手段と変える。割れた空間へと魔法を放った。初めての試みだがイメージ通りなら恐らく……
俺の放った断空は割れた空間へと消えた。そして作り出した割れた空間もパリンと鏡が割れたようにパラパラと崩れ地面に落ちていく。
「失敗か……?」
黒龍に反応はない。まだアイラの首元へ噛み付いたままだ。
「ゴァァァアアアアア!」
黒龍は咆哮を上げてアイラの首元から牙を離し勢いをつけて再び食らいつこうとしたが口元からボタボタと黒色の液体を吹きこぼして首元でピタリと止まった。
「上手くいったみたいで良かった」
黒龍はアイラからこちらへと向き直り羽を大きく動かした。必ず殺してやるという威圧感を感じるがそれ以上に俺には安心感の方が大きかった。
真っ赤な三日月をバックにアイラは羽ばたき俺と黒龍を眼下に従える。そして一言だけ。
「銀世界」
アイラの体から鱗が剥がれ落ちていく。そして人型へ。いつもの見慣れたアイラへと戻った。そして辺りには無数の鱗が漂い右手を空へ大きく伸ばした。その掌からはいつか見た限られた時にしか見れないダイヤモンドダストのようなものがキラキラと放たれていく。
「よくやってくれたの少年。妾達の勝ちじゃよ」
俺とアイラと黒龍。3人を銀色の世界が囲んだ。余程の密度で覆われているのだろう、不気味な空も真っ赤な三日月も俺の視界には存在しなかった。ただ美しい銀色の世界がそこにはあった。
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