あかねちゃん

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 ぼくはだめだ。だめだった。  なのにあかねちゃんは、きのうの夜、箱のフタをもちあげて、こっちを見ていた。勇気をだして、見ていたんだ。いつか、そとにでるために。  ぼくはなみだがでてしまった。  白い静かな病室にもどったぼくは、白い箱のまえに立った。 「あかねちゃん」  よんでも、へんじはなかった。もういちど、やさしい声でよんでも、へんじはなかった。  ぼくは箱のフタを開けた。あかねちゃんは、いなかった。やっぱりもう、そとへでてしまったんだ。  ぼくは、かなしくなってしまった。  マーカーで箱のおもての『あかね』を消して、『まどか』と書いた。  まどかちゃんはどんな子だろう。  今度こそ、ぼくよりも長くいてくれますように。
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