第1章 僕の二人の兄ちゃん

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 僕には兄が二人居る。  八つ年上の周(あまね)兄ちゃんと、五つ年上の円(まどか)兄ちゃん。少し年が離れているけど、弟の僕をいつも可愛がってくれる。  周兄ちゃんは学生時代から頭が良くて、生徒会長なんかもしていたしっかり者。今はどこかの大きな会社の会社員をしていて、会議では英語でも会話をする事があるらしく英語が得意でいつも僕に勉強を教えてくれる。  毎朝スーツを着て会社に行く姿は、大人って感じがしてカッコイイ。  そしてもう一人の兄である円兄ちゃん。今はフリーターでピザ屋でピザの配達をしているが、昔は族潰しと恐れられたヤンキーだった。学生時代から金髪でピアスをしていたし見た目は目付きも鋭くて怖そうだけど、いつも僕にアイスやお菓子を買ってきてくれる、本当は凄く優しい人。  そして僕、高校二年生になっても弱気で怖がりで特技も何も無い、平凡を絵に描いたような人間。  今はこの兄弟三人で、同じアパートの部屋で一緒に暮らしている。  両親は健在だが一緒には暮らしていない。いや、昔は皆一緒に暮らしていたんだ。だけど周兄ちゃんが高校卒業した辺りから今のアパートで全員一緒に暮らすのは手狭になり、両親だけ別にアパートを借りて暮らし始めたのだ。  元々狭いアパートだったけど、子供達が小さい内はそれでも充分だった。子供達の図体が大きくなるにつれて狭くて不便になった、それが母親の言い分。  最初は僕も両親と一緒に、という話だったのに、二人の兄に猛烈に反対されたのだ。 『志之介が一緒じゃなきゃ嫌だ』と。
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