第1章 僕の二人の兄ちゃん

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 朝からそんなに大声を出して疲れないのかな、と思うくらいの迫力で円兄ちゃんが周兄ちゃんに食ってかかる。  この二人の喧嘩はいつもの事だ。けして仲が悪いとかじゃないと思うんだけど、何かというとすぐに言い合いをしてる。  多分、僕が両親と一緒に住むのに反対したのはこれがあったからからなんだろう。周兄ちゃんと円兄ちゃん、二人きりで暮らしていたら、きっと毎日言い争いばかりで殺伐としていただろうから。 「あ、あの、僕、買ってこようか? コンビニならすぐそこだし」  ガタンと椅子から立ち上がると、兄ちゃん二人の視線が同時に僕に向けられる。  そして周兄ちゃんと円兄ちゃんが揃って感動したとでも言うように、大袈裟に肩を震わせていた。 「志之介……なんていい子なんだ。いいんだよ、このバカの為にそこまでしなくて……」 「バカとは聞き捨てならねぇが……シノがいい子なのは認める!」  この二人の仲を宥めるのは昔から僕の係。どんなに喧嘩をしてたって、僕がお願いしたらいつも喧嘩を止めてくれる。  結局はどっちの兄ちゃんも僕に甘いんだ。
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