第1章 僕の二人の兄ちゃん

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「シノ、忘れ物ねぇか? 弁当持ったか?」 「ちゃんと持ったよ」  いつもはシフトが合わなくて円兄ちゃんだけ後から家を出るが、今日は朝からバイトだからと一緒に家を出る。もちろん周兄ちゃんも。 「お前こそ忘れ物無いだろうな。手ぶらに見えるが」  カチャカチャとドアに鍵をかけながら尋ねる周兄ちゃんに、円兄ちゃんが「財布とスマホがあれば充分だろ」と両手を広げて見せる。 「それに男は余計な物は持たねぇんだよ」  そしてニヤリとドヤ顔をしていた。  あぁ、だから円兄ちゃんは学生時代から空のカバンを持ち歩いてたんだな。教科書類は重いからと学校に置きっぱなしで。  いや、空じゃなかった。僕が見た時は何故か鉄板が入ってたな。  僕と兄ちゃん達が住んでいるアパートは三階建ての二階。表の廊下を抜けて階段を降りていると「はよっす!!」と元気な声が外から聞こえてきた。多分、僕を迎えに来てくれた友達の寒沢大喜君だ。 「大喜君、おはよう」 「おう、志之介! 円さん、お疲れ様っす!!」  少し明るめの茶髪に着崩した制服、見た目はいかにもヤンキーっぽい大喜君が円兄ちゃんに向かってビシッと頭を下げる。 「疲れてねぇよ。大喜、シノの事は頼んだぞ」 「うっす! 任せてくださいっす!!」
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