第1章 僕の二人の兄ちゃん

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 僕が通う高校は昔周兄ちゃんが通っていたのと同じ学校。円兄ちゃんは違う学校だったけど、それでも円兄ちゃんの存在は他の高校にも広く知られていて、僕は入学してすぐの頃は『あれが相良円の弟かよ』と遠巻きにヒソヒソと噂された。  でもそのお陰で大喜君と友達になれたし、それは別にいいんだけど。  伝説のヤンキーである円兄ちゃん、そしてヤンキーっぽい友達の大喜君。僕の周りの人達を見たら僕も不良なのかと疑われても仕方ないと思う。  でもそれが無かったのは以前この学校に通っていた成績優秀で先生からの評判も良い、伝説の生徒会長とまで呼ばれた周兄ちゃんのお陰だ。 「おはようございます!」  校門では今の生徒会メンバーが朝の挨拶運動をしていて、登校してきた生徒を元気良く出迎えている。 「おはようございます、生徒会長さん」  僕も軽くお辞儀をしながら生徒会長である三年生に挨拶をすると、その生徒会長さんが爽やかな笑顔で「おはよう」と返してくれる。 「朝の挨拶運動なんて面倒なだけだと思っていたが……男子生徒が二人きりで登校してくる様を見ていると胸がときめくね! 君達はなかなか素質がある!」  そして何やら意味の解らない事を言ってきた。  僕と大喜君が一緒に登校してきたのが、そんなに大層な事なんだろうか。大喜君は円兄ちゃんに『シノをよろしく』と言われてから、やたらと『円さんに頼りにされている!』と使命感に燃えて毎日僕を家まで迎えに来るようになっただけなんだけど。
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