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 いつもの電柱の影。ゴミ置き場も兼ねているので薄暗くまだ人は通っていない事と、カメラが設置されていないことを知っていた事もあり、堂々と笠松の前に行く。 「よう、持ってきてくれたか? それにしても珍しいな。髪をあげてるなんて」 「そんな事どうでもいいのよ。ほら持ってきたわ。だからもうお終いにして……」そう言って、美容院で貰うシャンプーキャップをかぶり、明かりの届かないところを歩いていく。  封筒に何を隠してあるかも知らず、膨らみに大金だとでも思ったのだろう。笑顔で近づいてきた笠松の腹に封筒を当てて「さよなら」と押し付ける。 「お、お前……」 「生きてきてこんなに当たり前に使っていたものに怯えるなんてまっぴらよ」  そう言って最初から付けていた使い捨ての手袋のまま、スーツから携帯などの持ち物すべて持ち出し、車の鍵も奪う。  近くに止めてあるであろう車の中も念入りに調べ、自分の証拠となるものをすべて紙袋に入れ、その中に着ていた服とナイフ、シャンプーキャップに手袋を入れて普通に出勤する。
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