すべてはメールから始まった

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 校舎に入ると、後ろから「センパイ」といつもの呼び方で呼ばれる。ああ、今は会いたくなかった。しかし無視するわけにもいかない。  振り向けば彼女はいた。いつもの少し甘い香水の匂い肩にかからないくらいで全く傷んでなくサラサラなのが目で見てわかる髪。バランスの整った綺麗系というよりは可愛い系の顔立ちはやはり可愛い。女に慣れていない俺はいつもその、香水のにおいと可愛らしい笑顔にどきりとする。気を抜けばきっとすぐに惚れてしまうのだろう。何より彼女といるときはなかなかに楽しいのだ。  「ああ、おはよう、桜木」  「センパイ。何度言えばわかるんですか?美琴って名前で呼んでくださいって言いましたよね。それはそうと、なんで返信くれなかったんですか!?」  触れてほしくないところに直球で放り込んでくる。やばい。しかもなんかちょっと怒ってるよねこれ。  「返信しようと思ったんだけど、休憩時間とかわからなくてさ。はは」  なんだその乾いた笑いは。我ながらきもい。  そして彼女はというと、「本当ですか~?」と聞こえてきそうな、じっとりとした目で見つめてくる。  「じゃあわかったら連絡ください。それかまさか先輩に限って絶対ないと思うんですけど、他に誰か誘われてるとか・・・・・・?」  「いやっ、うん、ないから。ないない。また、あとで連絡するから。それじゃ」  桜木から視線を外し教室の方向へと向き歩き出す。背中に桜木の視線を感じたが振り返ったら終わりだ。教室へ急ぐ。  教室に辿り着けば、もう一つのメールの主である水瀬愛佳と目が合ってしまった。席も隣だしもうなんか気まずい。帰っていいですか。今日だけは席が隣というハッピーな配置も呪う。さて、どうするかと考えていると彼女のほうから声をかけてきた。  「あの、メール返信来なかったんだけど、寝ちゃってた?それか、他に誰か回る予定があって返信できなかったとか?」 もうやめてえええ。そんな不安そうな顔やめてええ。  「ごめん、そうなんだ。寝ちゃっててさ気付かなかった。朝見たんだけど、休憩時間わからないし被ってなかったら無理だよなーって思って返信しなかったんだ。それに特に予定もないよ」  「そっ、そうなんだ。それなら大丈夫だから。私と同じで午後は休憩だよ」    
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