序章

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今朝も執事の爺にファントムで送迎され学園に着く。 この学園は高位のアルファやベータが集まる名門校。 オメガはいない。 風紀を乱すという理由でたとえ高位の家に生まれたとしてもオメガという性別だけで書類審査で落とされる。 人権がどうのこうのと騒がれる現代日本だが、僕はこの制度を結構気に入っている。 オメガだからと人間として劣っているとまでは思わないが、世間で学校の人気のない場所でオメガが襲われただの、妊娠して産むだ産まないだのと日々多くの問題が出ている。 発情したから仕方ないではお互い済まない。 今のご時世最悪、裁判沙汰だ。 学校であろうがどこであろうが、 正直発情したオメガほど面倒なものはない。 かくいう僕にも親同士が決めた許嫁のオメガがいる。 懇意にしている提携先の息子で容姿も人柄も申し分ない幼い頃から知っている仲といっても過言じゃない。 だが正直、発情期になると電話で会いたいだの抱いてほしいと乞う、通常時とは全く違う声色、時には卑猥な言葉で僕を誘ってくるあの子はもはや別人で、ますます僕はオメガという性にいやでも嫌悪感を抱いた。 周りはアルファであるのにオメガのフェロモンを感じにくい僕にも問題があると言う。 しかし、感じないものは感じないんだからどうしようもない。 大体、それが感じれたからと言って愛の大小にはなんの関係もないじゃないか。 それに感じない側からしたら、フェロモンやバースに振り回される人間を冷ややかに見ざるおえない。 婚約者の彼のことはそれなりに可愛いとも思う。 結婚にも納得している。 いい妻になってくれると信用している。 結婚をすれば当然体を重ねて、行く行くは子どもを授かるんだろう。 そうすれば、いい母親になってくれる。 だがやはりそこまで想像出来ていても、彼がどうこうではなく発情期のオメガ性のあの尻軽な調子がどうも僕は受け付けない。 人間は獣ではない。 恋愛をあんな風に発情に任せて進めるべきではない。 発情は子作りのためにあるものであって、子作りする気がないのに体を重ねる理由はない。 大昔ならともかく、現代において人間に発情期はもう必要もない。 オメガにとっても、 発情期がなく、ただアルファが産みやすい体質だけがあればもっと世の中が生きやすいだろうに。
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