271人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
「はい。熱いから気をつけて。」
「ありがとうございます。」
あの淡い気持ちを抱かせた”年下の男の子”は、いつの間にかボヤけていく。
「仕事、今、何担当してるの?」
「担当、ですか?」
女の勘というのはこういう場面でも働くのでしょうか。
麻奈は目を閉じて、天井を仰いだ。
「坂下君、どこの出版社の専属なの?」
勇平は下を向きながら固まり、そのまま動かなくなった。
「坂下君。専属のカメラマンって、嘘でしょう。」
そして麻奈から、遠ざかる勇平。
「専属にしてもらう為にNYで写真撮って売り込もう としてたんでしょう。」
勇平は、更に遠ざかる。
「あ、あの……」
「何?」
麻奈の淡い気持ちはすっかり消え、再び先輩・後輩の仲に戻ってしまった。
「なんで 分かったんですか?」
「だって、そう言う人。沢山見てるもん。」
仕事も決まっていないのに、勢いでNYに来る人は、案外結構いる。
最初のコメントを投稿しよう!