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「まぁ、ベテランの方は慣れちゃってるみたいなので、三人轢いてもそこまでショックじゃないかもしれないですが」
私はその言葉にゾッとした。
今、この平和ボケとまで言われる日本という国で、医師の様に死と向かい合う職でもないのに、殺害する意思が無いとはいえ自分の運転している電車で人が死ぬのが 平気になるというのだ。
私は小野寺から目を逸らした。
「それは・・・それで恐ろしいな」
マグロユッケに乗っている満月のような黄身に箸を挿す。
そのまま上下に先端をずらすと、ドロリと膜が破れ黄身が流れ出す。
安物のマグロは薄いピンク色で水をしっかり切っていないのか、血抜きがキチンと出来ていないのか、濃い黄色に血の赤が混ざる。
私はそれを箸でしっかりかき混ぜてから、口に運びかみ締めながら味わう。
「小野寺には悪いが・・・人の死やスプラッターに慣れてしまうのは・・・ヤバイよ、流石にドン引きだよ」
小野寺は顔を引きつらせながらも無理に笑顔を作って私にこういった。
「先輩、貴方も大概ヤバイです」
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