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私は大きく口を開けてサラダを口に運ぶ小野寺に遠まわしに尋ねた。
存在したのであれば、教えて欲しいと。
小野寺は眉間に皺を寄せて、目を細めながら何もない宙を見上げながら思い出そうとしてくれた。
「あ~、そういえば…鉄オタの仕事の先輩が言ってたかな。北海道で起きた事故で運転手が両脚切断する事故が起きて、それである車両が引退する切っ掛けになったって」
「・・・それだろう、絶対」
「僕もそうだと思いますけど・・・まぁ、怪談なんて鉄道関係に限らず小さな事が大きくなっていくんですよ、眉唾物ばっかりですよ」
そうかぁ・・・と大きく息を吐いてから私は肩を落とした。
ゴンッ!コンッ
三度ノックの音が鳴る。
御盆がドアにぶつかったのか大きな音が鳴るおまけつきだ。
予期せぬその音にビクリと体を強張らせた私は思わず梅酒サワーを零してしまった。
「失礼しまぁーす。マグロユッケでーす」
間延びした女性従業員の声と一緒に鶉の黄身が中央に乗せられたマグロユッケがテーブルに出される。
「ごゆっくりー」
気の抜ける声とは反してドアを閉める勢いは強くバンッと音がなる。
「あっ!」
突然小野寺が声をあげる
「仕事の先輩に聞いた話、思い出しましたよ」
「お!なになに、聞かせて聞かせて」
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