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プロローグ
僕は我を忘れて必死で街中を走り回った。
今までにない事態に僕は焦っていた。
心の底から嫌な予感がふつふつと湧き出してくるが、淡い期待でそれらを押し殺し平静を保とうとする。
家々の間の細い隙間を逐一覗き込み、茂みの中も入念に探して周った。
しかし、何処にも彼女の姿は見当たらない。
たかが一秒の時間の流れさえ今はとてつもなく重くのしかかり、不安、焦り、恐怖が僕の心臓を握り潰さんとばかりに痛めつける。
空には暗雲が立ち込めてきている。
気が付けば雨も降り出してきて。
どれだけ走り回っていたことか。
草を掻き分けて、
ようやく彼女に会えるという期待に胸を膨らませ、
無我夢中に走り抜けたその先には、
彼女の姿があった。横たわる彼女の姿が。
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