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僕と猫
僕はいつも一人だ。
誰にも見向きもされず、
誰にも優しくされず、
誰にも愛されることなく、
また今日という空白のページを捲るような無意味な日々を過ごしている。
巨大な爬虫類の皮膚のようにごつごつしたアスファルトを見つめながらただただ歩く日々。
特に宛がある訳でもない。でも、じっとしていてもいつか干からびて死んでしまうだけ。
僕は今日も一人だ。
もう何日も食事を摂っていない、空腹のあまり意識が朦朧とし目眩さえ感じるが、それでも今日も歩き続ける。
生きていても意味がない。でも死にたくない。死ぬは怖い……。
例え生きていることに意味が見出せなくとも、死の近づきをこの身に感じると生に縋りつきたくなる。
それが生き物としての本能。
死が怖くないものなんて居ない。
僕はずっと一人だ。
今日は雨が酷い。ついこないだまで肌を突き刺すような鋭い日の光を放り込んできた太陽は、ここ最近は元気が無くなってきたようだ。
空から落ちてきた雨粒が肌に当たると、ひんやりと地肌に触れて僕はブルっと体を震わせる。その身震いは僕に、また嫌いな季節が到来する予感を与えていた。
僕は雨が嫌いだ。
ただでさえ一人ぼっちのこの身をより一層孤独感が苛む。でも、皮肉なことに雨の日は僕にとっては都合が良かった。雨が降ると外を歩く人の数が減るからだ。
ポツポツとすれ違うビニール傘を差す人達には見向きもせず、それとは逆方向に僕は歩を進め、細い路地裏へと入る。
すると、建物の裏口の戸が開き一人の男が片手で雨を嫌いつつ、大きな袋を青いバケツの中に放り込んだ。戸の中からは僕の胃袋をギュッと締め付けるような匂いがして、無意識の内に僕は男の持つ袋を凝視していた。
男はバケツの蓋を乱暴に閉めると、また戸の中へと消えていった。
その男の気配が無くなったことを確認すると、青いバケツのもとへと歩み寄る。
乱暴に蓋をされたバケツは半開きで、その隙間から中を覗き込むと中には飲食店から出た食材の切れ端、それと残飯がぎっしりと詰まっていた。
気がつけば僕は我を忘れて無我夢中にそれを貪った。
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