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彼女との日常
それからの僕らは日々の時間を共に過ごした。
猫の怪我が治るまでは僕が食料を調達し、秘密基地へと持ち帰り一緒に食事を摂る。
僕と猫は少しずつお互いのことを知り、お互いの心を開いていった。この子は女の子で、か弱いながらもこの広大な世界で一人健気に生きてきたんだ。
僕は彼女の過去について深く詮索するつもりはないし、それは彼女も同じ。今この時、笑顔で向かい合えるそんな日々がずっと続いてくれるだけで僕の心は満たされた。
今日は彼女に何をプレゼントしようか。
ある日は壊れかけのおもちゃ。
ある日は汚れたぬいぐるみ。
ある日は公園に落ちていたボール。
ある日はボロボロの絵本。
毎日違うものを僕が持ち帰ると、彼女はそれはもう大層喜んだ。
大して遊び道具にもならなさそうな物でも、僕の持って帰ってきた物を見るや否や真ん丸な目でそれを見つめては、早く頂戴と言わんばかりに前のめりになって首を伸ばしてくる。
気がつけばこの秘密基地も囁かな賑わいを見せていた。
拾ってきた物が雨に濡れないようにダンボールも新調して、小屋の両隣に設置した。
彼女はそれらに囲まれながらコレクションルームさながらの満足感に浸り、両脚を放り出してぐでっと横になって寛いでいる。とても気持ちが良さそうだ。
ふと視線を足元に向けると、怪我も順調に回復しているようで一安心。
これなら近々一緒に散歩にも行けそうだし、今のうちに近くで綺麗な散歩スポットでも探しておかないとな。
僕は彼女の頭に手を伸ばし、そっと優しく撫でてやった。
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