彼女との日常

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
今日は一人で河川敷を歩いてみることにした。 普段は鉄くずやゴミの匂いで混沌とした街中の隅っこばかりを選り好んで歩いていたが、せっかく二人きりで散歩をするならば誰にも邪魔されずに落ち着いて歩けるところがいい。 できれば頬を撫でる風が気持ちよくて、彼女が喜びそうな綺麗な花なんかが咲いてたら尚良し。 僕は秘密基地のある場所からあまり離れすぎない程度の距離で彼女との最適な散歩スポットを探した。 河川敷を道なりにしばらく歩き続けていると、ふと前方の道沿いに綺麗な色のしたものがゆらゆらと揺れているのが見て取れた。 僕はそれが気になって、惹きつけられるように駆け足でそのもとへと向かう。 すごいきれい……。 そこで僕が目にしたものは、辺り一面に咲き誇る色とりどりの花々の姿だった。 それは河川敷の散歩道を挟んで、更に奥へと誘うかのように道沿いに連なっている。 僕はしばらくの間その光景に見蕩れていた。 それは眼前に広がる景色がただ綺麗だったからという訳では無い。 今まで周りに目を向けることを避けて足元ばかりを見て歩いていたが、一度顔を上げて辺りを見渡してみればこの世界ではこんなにも美しく、心に響くものに巡り会えるということを初めて知ったからだ。 今まで歩いてきた道だって、まだまだ僕のしらない景色が広がっているのかもしれない。 そう考えると、不思議と胸がざわついて奇妙な高揚感がピリリと僕の体を揺さぶった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!