憧れてた。

1/3
45人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ

憧れてた。

入社4年目の秋、私は部署異動になった。 そして、あの人の部下になった。 「主任、お疲れ様です。今大丈夫でしょうか?」 「あぁ、どうした?」 あの人は、新しい部署に慣れない私をいつも気に掛けてくれた。 最初は完璧すぎて怖かったけど、常に向上心を忘れず、部下をフォローしてくれるあの人に憧れていた。 異動して半年ほどたった頃、1年に1度行われる業務改善内容を発表する大会に向けて発表者を決める機会があった。 業務改善のサークル活動は元々週1回行われていて、大会予選は毎年9月から行われていた。 去年異動してきたときには すでに予選落ちしていたので、私は参加していなかったけれど。 今回あの人は発表者に私を推薦した。 「桐谷ならやれる。俺たちも資料やスライド作りフォローするから。」 私は期待に応えたくて、仕事の合間に会議室を借りて、必死に練習した。 「お疲れ。調子どうだ?」 あの人は何度も練習に付き合ってくれた。 スライドも資料も完璧に仕上げてくれた。 そう、あの人は仕事も何もかも完璧だった。 私たちのグループは本社大会を勝ち抜き、海外の子会社も集まる全社の大会に進出した。 私はこの生きてきた中で、こんなに頑張ったことないんじゃないかってくらい練習した。 『明日のプレゼン、緊張すると思うが楽しんでいこうな。』 すごく緊張してた。 だけど、前日のあの人からのラインが私の背中を押した。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!