第十二章 見えざる敵

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 疲れきったのか風邪薬の副作用か、愛氣は俺の肩に頭をのせて眠っていた。  愛氣……。  起こすのも可哀想だからそのままにしておこう。  こうして見るとホント普通の女の子なんだけどな。  良く見るとやっぱり可愛いかも。  さっきから胸がドキドキしている。  俺は愛氣のことが好きなんだろうか。  もちろん嫌いじゃあない。  でも友達とも少し違う。  こんな気持ち十三年とちょっと生きて来て初めてだ。  恋……。  これが『それ』なんだろうか。  あー、もうわっかんない! 「スー……スー……」  愛氣は俺のそんなモヤモヤした氣持ちも知らずに道場に着くまでずっと小さな寝息をたてていた。 「着いたよ。私は道場開けて来るから、悪いけど愛氣ちゃん起こしておいてくれるかな」 「あ、はい」 「それじゃあ、すぐ来るから」  多分中庭に車を止めるためだろう。  宏治郎さんは運転席から降りると門の横にある通用扉から中に入って行った。  今、車の中には俺と愛氣だけだ。  隣には俺の初恋(多分……)の女の子が無防備な寝顔を見せている。  俺は愛氣のピンク色の唇を見つめた。  あの雨の夜の愛氣の唇の感触がまだほっぺたに残っている……。  
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