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キス……しちゃおっかな。
顔を愛氣の唇に近づける俺。
《ブルブルブルブル……》
な、なに考えてんだ。
この卑怯者!
でも、この気持ちをどうやって抑えろって……。
「う、う~ん」
あっ! 不用意に頭なんか振るから起きちゃったよ。
「……着いたの」
「う、うん」
「そう。じゃあ降りよっか」
「そ、そうだね」
「降りないの?」
「降りるよ」
「じゃあ降りてよ。直人が降りないとあたしも降りれないんだから」
愛氣、愛氣もそんなに俺のことが好きで車からも一緒に降りたいのか。
と言うわけじゃなくて、ただ単にドア側の俺が降りないと邪魔なだけなんだよな。
でも……。
その、今は動きたくても動けないんだよ。
とある事情で。
「早くしてよ」
「分かってるけど」
「どうしたの? 前屈みになって」
「ちょっと腹が痛くて」
「え? 大丈夫?」
「ちょっとダメかも」
腹を押さえる俺。
「宍戸に投げられた時どこか打ったんじゃ」
そう言って愛氣が俺の腹に手を伸ばして来た。
「だ、大丈夫だから。愛氣、先に降りてて。少ししたら行くからさ」
「そう。じゃあ前|跨(また)ぐよ」
そう言って愛氣は俺の膝を跨ごうとした……。
「キャッ!」
《ドスンッ!》
愛氣が俺の膝に引っ掛かりそのまま膝に座ってしまった!
「ウッ!」
下半身がヤバい状態なのに『モロに』愛氣のお尻が当たって更にうずくまる俺。
「ゴメン! 大丈夫だった?」
慌てて立ってドア側に行く愛氣。
「ダイジョブだよ」
ホントは色んな意味でダイジョブなんかじゃないけど。
今のショックでなんとか治まったのはラッキーだったぜ。
ここで一こと言っておくけど、別にいやらしいことを考えたから『こう』なったんじゃないぜ。
男ってのは極端に疲れると勝手に『こうなる』時もあるんだよ。
でも『いやらしいことも考えたからでしょ』と突っ込まれれば何も言えないけど……。
とにもかくにも俺達は車を降りた。
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