第十一章 決戦は土曜日(続き)

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「じゃがの。柔道の『試合』となるとまた別じゃ」 「いえ、そんな別などでは……」 「試合にはルールがある」 「そ、それは試合ですから」 「ワシも昔やっとったから分かるが。組んだところからしか技をかけてはいけない。肘以外の関節技の禁止。手首のみを持っての技の禁止、背中をついたら一本……」 「はあ……」  鮫嶋は『何を当たり前のことを』と言った顔をしている。 「他にも色々あるがの。もし、今日の組手も柔道のルールの中でしていたら愛氣個人はともかく、団体戦ではウチの負けじゃったろう」  確かに、俺達は柔道のルールでは反則や一本負けになってることだらけだ。 「それは……」 「それに……」  言いながら虎蔵じいさんは優しい目で愛氣を見た。 「この娘(こ)は『合氣道』が好きなんじゃよ」 「……」 「鮫嶋さん。そう言う事ですので。行きましょう、父さん」  宏治郎さんに促されて俺達は歩き出そうとした。  その時。 「待ってください!」  立ち止まる俺達。 「鮫嶋さん、しつこいですよ」 「愛氣さんのことは『今は』諦めます」  オイオイ、『今は』ってことは『いつかは』引き抜こうって思ってるってことじゃんよ。
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