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「最後に我々に上杉師範の稽古をつけて頂けないでしょうか?」
「ワシの?」
「ハイ、今日は元々は交流稽古。我が部員達も幻の師範に稽古をつけて頂けるとのことで、大いに期待していたのですよ」
「ちょっとあなたさっきから聞いてれば、なに言ってるんですか!」
側で聞いていた美沙ちゃんが間に入って強く言った。
「愛氣ちゃんはさっきまで無理してたから早く帰って休ませないと……」
「部外者は黙っててください」
「キャッ!」
鮫嶋が美沙ちゃんを横に払った!
床に倒れる美沙ちゃん。
「美沙ちゃ――」
「初音さん!」
俺が声を出すより速く、側に行き美沙ちゃんの手を取る虎蔵じいさん。
「大丈夫かの」
「はい。ちょっと転んだだけですから」
「そうかの」
「先生、お願いします。なんとしてもこのまま終わらせる訳には――」
「よかろう」
立て膝のまま答える虎蔵じいさん。
「え? ホントですか?」
「ああ、そんなに言うならお相手しよう」
ゆっくりと立ち上がる虎蔵じいさん。
「……!?」
な、なんだこの虎蔵じいさんの『氣』は!
さっきまでの穏やかな雰囲気とは全然違う。
「直人にもわかる?」
「ああ、なんか身体中が寒くなってきた」
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