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「あの顧問、おじいちゃんをちょっと怒らせちゃったかもよ」
「それでは、まずは試合に出なかった三年から」
「全員で来なさい」
「え? 全員ってウチは一年から三年まで二五人。行長を送って行った二人を除いてもまだ……」
「何人でも同じじゃ」
言うと虎蔵じいさんは歩いて行って畳の中央に立った。
「ほう、伝説の二十人掛けですか。ですが、ウチは半分以上が黒帯で全国レベルの奴らばかりですよ。いくら上杉先生でも昔と今では――」
「三分じゃ」
「え?」
「三分でワシに一回でも受け身を取らせたら、今日の勝負お主らの勝ちでも良いぞ」
「ほう。お年の割りにたいした自信ですね」
「フンッ。最初からワシを引きずりだすことを狙っておったクセに」
「これはこれはお見通しでしたか」
「父さん。無理しないでください」
「ホントにいいんですか? ご子息も心配しておられるようですが」
「早く囲ませぇっ!」
「ウッ……いいでしょう。それなら、こちらも全力で行かせてもらいますよ」
鮫嶋がサッ! と手を上げると、距離をおいて虎蔵じいさんの周りを柔道部の奴らが取り囲んだ。
「大丈夫かな? いくら虎蔵先生でも」
「おじいちゃんならきっと大丈夫よ」
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