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「そうか、愛氣は前にもこういうの見たことあるんだ」
「ううん。あたしもこんなにたくさんのは初めて」
「え!?」
「掛かれっ!」
俺達が話してる間に鮫嶋の掛け声がかかり、二三人の柔道部員達が一斉に虎蔵じいさんに掛かって行った。
「……」
いくら相手が中学生とは言え、みんな体格いいし、一年生だって一五〇センチの虎蔵じいさんよりはデカいのばっかりだ。
「そのまま押し潰せっ!」
鮫嶋のデカい声が飛ぶ。
普通に見たらただの老人虐待だぜ、こりゃあ。
「こっちじゃ」
「……!?」
「え!?」
さっきまで畳の真ん中に立っていたはずの虎蔵じいさんが、いつの間にか囲いの外に出て柔道部員の塊を手招きしていた!
「…………」
ボー然とするみんな。
俺も何が起こったのか分からない。
「さすがおじいちゃん」
「一番囲みの薄い所を身長差も利用してタイミング良く抜けた……」
「うん」
愛氣と宏治郎さんには見えていたのか。
やっぱあの家族タダもんじゃない。
「……」
何が起こったか分からないみたいにつっ立っている部員達。
「お前達、何をしている! もう一度囲んで、さっさと潰せ!」
『ウォリャアーッ!』
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