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「スゴォーイ!」
唄子さんと美沙ちゃんも、虎蔵じいさんの動きに感動したみたいだ。
思わず手を握り合うふたり。
「あっ」
慌てて手を引っ込めるふたり……。
そうこうしてるうちに、柔道部の奴らの息が乱れ始めて動きがノロくなって来た。
「どうした若者達。もうグロッキーかえ」
『ウオオオオオッー!』
『トォリャアー!』
虎蔵じいさんに挑発されて掛かって行く部員達。
だけどその動きにはもうキレが無くなってる。
もう一通り投げられると部員達は畳から起き上がれなくなってしまっていた。
畳の中央には息ひとつ乱れていない虎蔵じいさんの姿。
「あわわわわ……」
顎が外れたように口を開けっぱなしにしてる鮫嶋。
「そんなバカな……」
「初音さん、ワシャあ、あん時より少しは強くなったかの」
美沙ちゃんを見て語る虎蔵じいさんの声がかすかに聞こえた。
虎蔵じいさんの目には、美沙ちゃんを通して、多分初恋の相手でもあるひいおばあちゃんの姿が見えてたんだろうか。
ゆっくりこっちに歩いて来る虎蔵じいさん。
と……。
「そうじゃ、まだ一人おったの」
虎蔵じいさんの見た方向には……。
「え!?」
自分で自分の顔を指差す鮫嶋。
つかつかと鮫嶋に歩いて行く虎蔵じいさん。
「クッ、いくら中学生相手とは言え二十人以上の相手をしたんだ。そんなじいさんにオレが負ける訳ない!」
鮫嶋はゆっくりと近づいて来る虎蔵じいさんに勢い良く飛びかかって行く。
《ヒュンッ!》
「トリャアーッ!」
叫ぶ鮫嶋に近づいて行く虎蔵じいさんも急にスピードをあげた!
《ドンッ!》
掴みに来た鮫嶋の両手に身体ごとぶつかる虎蔵じいさん。
今度の相手は百キロ近い黒帯の大人。
虎蔵じいさんの二倍以上ある体重の相手に、何の技もしないでただの体当たりなんて。
はじきとばされる!
と、思った瞬間。
「ダァーッ!!」
虎蔵じいさんの氣合いがかかる。
《ヒューン……ダーンッ!》
そして、畳に叩きつけられていたのは虎蔵じいさん……では無く鮫嶋のほうだった。
「氣導奥義『八咫鏡(やたのかがみ)』」
静かに呟く虎蔵じいさんの足下に鮫島は白目を剥いて仰向けに倒れている。
「そちはちとレデイへの接し方を考えたほうが良いぞえ」
こっちに向かって虎蔵じいさんはVサインをした。
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