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第十二章 見えざる敵
一、忍びよる影
空が紅く夕焼けに染まりかけた頃、俺達は宏治郎さんの車で龍海中から道場へ向かっていた。
亮達とは龍海中で別れた。
亜美さんはバイクでそのまま道場へ。
虎蔵じいさんも風に当たりたいとか言ってサイドカーに乗って行った。
美沙ちゃんも途中まで一緒に車に乗っていたけど、お仕事があるからってマンションの
近くで降ろしてもらったんだ。
俺は愛氣が心配だったから道場まで行くことにした。
愛氣は口では大丈夫とか言いながら顔が火照り、熱も高くなっていた。
愛氣と俺はワンボックスカーの後ろに乗っている。
俺達は急いで道場に向かうために、着替えないで稽古着のままだ。
愛氣は汗のかいたTシャツだけ脱いで直(じか)に稽古着を着ている。
今日は袷に前ひもが付いてるのだから、中が見えるようなことはない。悪しからず……。
「大丈夫?」
「もぉ大丈夫よ。みんな大げさなんだから」
「でも、凄い熱だぞ」
「さっき風邪薬飲んだから平気よ」
「でも……」
《コトン》
何かが俺の右肩に当たった。
「え?」
「スー……スー……スー……」
「あ……」
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