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『好きだ』
春斗に引き寄せられた時、耳元で言われたその言葉が頭から離れない。
「何なのよ、もう・・・」
結局、あの時は気が動転して、春斗の身体から無理矢理離れ、逃げるようにして帰ってしまった。
春斗と仲良くなった、文化祭の準備の時。
痴漢にあって、助けてくれた春斗の事は王子様にも見えた。
正直、春斗の事は気にならない訳でもなかった。
仲良くなり、日々過ごす上で、少しずつ好きと言う感情が芽生えない訳でもなかった。
だが皐月を見ているうちに、その感情を抑え込むようになっていた。
顔が熱い。
「はーぁ」
思わず、重いため息がひとつ出たときだった。
ピコン♪
「ん?」
スマホを見ると、皐月からのLINEだった。
【今度の土曜日、浴衣を買いに行こうよ】
なんというタイミング。
「さっちゃん・・・」
気まずい。
そう思いはしたが、【うん!もちろん!】と返信してしまった。
「私は・・・春斗の事、好き・・・だけど」
皐月はきっと、もっと春斗の事を好きなんだろう。
そんな事を考えると、その感情すら酷いものの様に思えてしまうのだった。
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