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「現に部屋はこの有り様だが。そもそも、勝手に部屋に入ることを許した覚えはない」
「だって!」
「だってじゃない」
「上司の部屋に盗みに入るなど、どんな理由があろうと許されることじゃない。今この場で俺に切り捨てられたとしても、衛兵に突き出されても仕方ない状況だな」
煌はちらりと緋紗が手にしている鞭に目をやって、ごくりと生唾を飲み込み、覚悟を決めたような声で言った。
「……お仕置きは受けるから、だから、お願い」
王宮の使用人は、たくさんの規則に縛られて生活している。そして、規則をおざなりにすればそれ相応の罰が待っている。
決して短くない期間を宮廷で生きてきた煌はそんなことは十分理解しているはずだ。それでも規則に反して外に行きたいと煌は言う。
「もちろん盗みに入った罰は与える。お前の望み通り、外出禁止を破ろうとした仕置きもしてやろう。だが、それを対価に要求が通せるなんて思うな」
「っ……」
煌は唇を噛み締めて俯いた。
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