通行証

11/30
前へ
/395ページ
次へ
もし今日、煌が通行証を手に入れることができたとしても、王宮を抜け出すことは叶わなかっただろう。 通行証といっても身分証のひとつに過ぎず、それでいつでも好き勝手に外出できるという訳ではない。 宮殿への出入りは厳重に管理されているのだ。 「だいたい、お前は懲りるということをいい加減覚えろ。前に外壁を越えようとしたときどんな目にあったか、もう忘れたか」 「……だから、今回はちゃんと通行証で、と思って」 思わずため息が出る。 「馬鹿が。煌、お前は無断で王宮を抜け出そうとして衛兵に捕まったんだろうが。塀によじ登ったからじゃない」 「でも、緋紗にお願いしたって、外出許可してくれないし!」 「理由もなく許可できるか」 「だったら、緋紗の許可証を使うしかないじゃん」 「窃盗は重罪だ。そんなに衛兵に突き出されたいのか」 「俺を衛兵に突き出す気なんかないくせに!」
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2712人が本棚に入れています
本棚に追加