通行証

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「煌」 「……そうだよ!俺が千草に見張りを頼んだんだ。千草は通行証のことなんて、なにも知らなかった!」 そう言って投げやりな様子でふいっと顔を背けた。 「そうか。分かった。千草」 静かに名を呼んだだけで、まるで怒鳴りつけられたかのようにびくりと身を震わせる。 「はい……」 「お前は仕事に戻れ。煌、お前が千草の分も罰を受けろ」 冷たく放たれた緋紗の言葉に、今度は煌は目を見開いた。 「なんでそうなるんだよ!」 「お前のくだらない計画の片棒を担がされたせいで、千草が自分の仕事を放り出すことになったんだろう?もっとも、千草が自らの意思でここにいたというなら、千草にもお前と同じように罰を与えるまでだが。そもそも、お前も千草も、上階への立ち入りは許されていないはずだな」 目の端で捉えた千草は、すがるように煌を見ていた。
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