2712人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、ため息をついた緋紗が続いて発した言葉は想定外のものだった。
「いや、巻き込んですまなかったな」
誉稀は驚いて顔を上げた。
「……え?」
謝られた?
あの緋紗に?
呆然として見上げると、そこには物憂げな表情を浮かべる緋紗の姿があった。
「煌は良い友人を持ったようだ」
……今度は褒められた?
にわかには信じられず、瞬きをする。
「……あの、罰は……?」
思わず誉稀が尋ねると、緋紗は少し怪訝そうな顔をしたあと、ふっと笑った。
「俺がお前を罰する理由があったか? お前の相手は浅葱だったと記憶しているが」
緋紗の視線が浅葱へと向く。
「鬼で悪魔、ねぇ」
緋紗は揶揄うような口調でそんなことを呟く。
「……今後ともその名に恥じぬよう努めましょう」
背後で浅葱がそう答えるのが聞こえてきた。
大人たちの会話は本気なのか判別がつかない。
冷や汗が誉稀の背中を伝う。
最初のコメントを投稿しよう!