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「まぁ、冗談はさておき」
緋紗はそう言って再び視線を誉稀へと向けた。
……どの辺が冗談だったのだろう。
「ことの経緯は分かった。煌とは話し合うことにしよう。そう心配せずとも煌をとって食うようなことはしないから安心しろ」
正直、緋紗のことは血も涙もない恐ろしい人間なのだと思ってた。
だが、そんなことはないようだ。自分が思っていた以上に緋紗は煌のことを大切にしている。
緋紗はきっと、煌の話にも耳を傾けてくれるだろう。
「……はい。ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる誉稀を見つめたまま、緋紗は静かに続けた。
「だが、煌を罰するかはまた別な話だ」
緋紗は続ける。
「こと宮中において、主人をこき下ろすなど言語道断だ。お前たちが白昼堂々と叫んでくれたおかげで、お前たちの声は多くの人が聞いている。王宮内の秩序を保つためにも、本来ならば相応に処分すべきだろう。煌も、お前もな」
緋紗の言葉に誉稀はどきりとする。
緋紗の言うことは正しい。
あんな些細な悪口であっても、相手が相手なら首が飛んでいてもおかしくない。下のものが上のものに楯突くなどあってはならないし、それを許してはならない。王宮の序列とは本来そういうものだ。
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