第9章

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「だが、お前たちにとっては幸か不幸か、お前も煌も王宮の序列外だ」 そう。煌も誉稀も厳密には王宮に雇われた使用人ではない。そのため大抵のことについては公的な処分は免れるが、かわりに主人からのお仕置きが待っているというわけだ。 「あとは俺の裁量で煌をどうするか決める。お前は煌は悪くないと言ったが俺はそうは思わない。きっかけはどうであれ、したことに変わりはない」 緋紗がそう判断する以上、煌がなんらかの罰を受けるのは致し方ない。 それに、煌が表舞台に出てくることはないが、緋紗の従者だということは周知の事実。緋紗の立場上、身内だからといって従者を特別扱いしては他に示しがつかない。 その点、緋紗も浅葱も身内に甘いということはない。 ……むしろ浅葱は身内にだけ厳しい。 「お前は俺の部下でもなければ王宮の使用人でもない。浅葱の私的な従者だ。お前に対する全ての責任と決定権は浅葱にある。浅葱がお前をどうしようが俺は関知しない。それがどういうことだか分かるか?」 緋紗に見つめられ、誉稀はごくりと生唾を飲み込み、小さく首を左右に振った。 「お前が問題を起こせば責任を問われるのは浅葱だということだ。覚えておけ」 そんなことは考えたことなかった。 浅葱からそんなことを言われたこともない。 「……はい」 神妙に頷く誉稀を見て、緋紗は息をついて背もたれに身を預けた。 「お前は素直だな。友人思いで、頭の回転も早い。軍にやるのが惜しいな」 そんなに褒められると居心地が悪い。 浅葱をちらりと見ると、なんとも言えない能面のような表情をしていた。 ……そっちは見なかったことにしよう。
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