第9章

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榛名のいるところに千草はいる。 そして榛名の居室の場所はおおよそ検討がついていた。 今まで会いに行けなかったのは、そこが王宮内でも奥まったところにあり、煌ひとりでは入ることができない領域にあったから。 いくつもの部屋の前を通り過ぎ、やっとたどり着いたのは王宮の深部へと繋がる扉の前だった。 ここまでは何度か来たことがある。 そこは常時、数人の衛兵が見張りに立っていた。 少し離れた柱の陰に身を隠しながら様子伺う。 さて、どうやって衛兵を突破しよう。 どうしようかと思案していると、急に背後が明るくなった。振り返ると、ランプを手にした衛兵を先頭に数人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。 まずい。 このままでは鉢合わせしてしまう。 だが、そう思ったときにはすでに前にも後ろにも衛兵がいて、煌は行き場を無くしていた。 身を隠す間も無く、あっという間にランプの光に照らされれる。 「そこで何をしている」 逃げようと一歩踏み出したのがまずかった。瞬時に不審者と判断されたようで、俊敏な動きの衛兵たちに一瞬にして取り囲まれる。 剣を突きつけられ、反射的に煌は両手をあげた。 「……子供? の使用人だな。こんなところで何をしている」 万事休す。 この人数から逃れるのは不可能だ。 「……何事だい?」 突然聞こえてきた男の一言に空気が一変した。 煌を捉えていたものたちが、一同に声の主に向き直り、一斉に頭を下げる。
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