第9章

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「ずいぶんと騒々しいね。どうしたの?」 衛兵たちの後ろに、ふたつの男の影が見えた。 「は。この者が、あたりをうろついておりまして、捉えたところです」 衛兵に後ろ手に腕を捻りあげられ、男の前に引きずり出される。 顔の近くにランプがきて、煌は眩しさに顔を顰めた。 「……煌?」 名を呼ばれてはっとして顔を上げると、驚いたような表情の男ーー榛名が煌を見つめていた。 「榛名様の知り合いですか?」 榛名の反応を見た衛兵が訝しげに煌を見る。 「ああ。離してやれ」 榛名のひと声で、煌を抑えていた衛兵がばっと離れる。突然の状況に唖然としていると、榛名が真っ直ぐこちらに近づいてきた。 「……煌。勝手に先に行っちゃだめじゃない」 榛名はそう言って手を差し出してきた。 どうやらこの状況から助けてくれるらしい。ここは榛名の芝居に乗っかるしかない。 「あ……すみません」 そう言って、煌は差し出された榛名の手を取った。 「榛名殿のお連れの方でしたか。大変失礼いたしました」 その様子を見て衛兵たちはすぐに剣を収めて頭を下げた。 「面倒をかけてすまなかったね」 榛名がそういうと、衛兵たちは一礼して道を開けた。 「行こうか、煌」 肩を抱かれるようにして、煌は榛名と共に扉の先へと進んだ。
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